病院薬剤師は、入退院での関わりや、カンファレンスを通して、日常から様々な職種の人たちと交流することが多くあります。
もちろん薬剤師同士も人間関係の悩みが出てくることはありますが、他職種間でも人間関係の悩みが出てくるのは、病院薬剤師ならではないでしょうか。
実は病院薬剤師の退職理由には、年収などの労働条件が理由になることの他に、人間関係の悩みも大きな理由ひとつになっています。
今回は、病院薬剤師の人間関係の辛いことはどのようなことがあるのか、また対処法についてお伝えしていきます。
病院勤務で見られる人間関係の悩み
病院に勤務していると、医師・看護師・ソーシャルワーカー・理学療法士・栄養士等など、多くの専門の職種の人たちと接する機会がとても増えます。
色々な職種の人と交流することが出来る、それが病院薬剤師のメリットでもありますが、合わない人が出てくると、そこで人間関係の悩みが発生してしまう可能性がありますよね。
そこで、病院薬剤師で起こりがちな人間関係の悩みを、3つのタイプに分類してみました。
①薬剤師同士での人間関係の悩み
狭い病院内薬局の中で苦手な薬剤師がいると、業務上避けることも難しいので、閉塞感を感じてしまい、悩みも深くなりがちです。
私の場合も、その日によって大きく機嫌が変わって気を使わなければいけない先輩薬剤師がいて、ストレスになることがよくありました。
何か気に食わないことがあると当たり散らしてくるので、こっちとしてはたまりません。当時、新人薬剤師だった私は、毎日毎日、先輩薬剤師の顔色を伺わないといけなかったのがつらかったです。
そういう先輩薬剤師は患者さんとの対応や、業者との対応にしてもぞんざいになりがちで、業務上悪い影響が出ていることも珍しくありませんでした。
病院薬剤師の場合は、そのような苦手な薬剤師がいたとしても、店舗異動等ができないのが悩みの種です。そのため自分である程度、解決する道筋を付ける必要が出てきますね。
まず、私がやってみたのは、苦手な薬剤師のタイプを分析してみることでした。
薬剤師業務にミスなどの影響を与える可能性がある場合は、徹底的に自分の業務を守ることを優先してみました。
例えば、「私はここまでやりました」というのを周りにわかるように明文化しておくことです。そうすることで何かトラブルに巻き込まれたとしても、自分の正当性を主張することが可能です。
もう一つのタイプとしては、業務上は特に問題はないけれども、性格上苦手な部分があるという場合は、業務の部分だけにしてプライベートな部分は必要最低限の接触をはかっていました。
②他職種との人間関係の悩み
病院薬剤師の他職種との人間関係は、何か問題があってもいくらか距離をおく事が可能です。薬剤師同士とは違って接触はあるものの、ずっと顔を合わせるわけではありませんからね。
ただ、接する場合は同職種とは違い、業務上伝達したことに対する認識の違いが生まれやすくなってしまいますので注意が必要です。
どうしても苦手な相手場合は、同職種の他の人に相談して、対応をお願いしてもらうこともできるのではないでしょうか。
それでも自分が接しないといけない場合は、とにかく、相手に理解してもらうまで伝えることで認識の違いを埋めることができ、トラブルに繋がることを未然に防ぐことを意識してみましょう。
③医師との人間関係の悩み
薬剤師の仕事は、医師が処方箋が出して、医師の指示のもとに調剤を行っていくので、医師との連携は薬剤師業務を行う上で必要不可欠になってきます。
ただ、医師にも色々な性格の人がいるので、合う・合わないがどうしても出てきてしまうのがつらいところです。
やはり医師とは、薬剤師の業務上、疑義照会をしたり、処方依頼をしたり、合わない医師であっても報告や連絡を行わないといけません。避けてはやり過ごせない存在です。
調剤薬局で勤務していると電話越しでの対応で済むこともありますが、病院に勤務していると、病棟や廊下ですれ違ったり顔を見ることも少なくありません。
面と向かって直接対話をすることもよくあります。
私の場合は、電話をかけてもわざと電話を切ったり、長時間職場を抜け出し連絡が取れない、薬局に詰め寄ってきて怒鳴り散らしていくという行動をとる医師がいました。
このような場合はハラスメントに該当することもあるので、我慢をせずに、必ずあなたが働く病院の相談窓口に相談し、対応をしてもらいましょう。
解決しないのなら、その病院からは転職という事も頭に入れた方がいいかもしれませんね。
病院薬剤師が人間関係に悩んだ時の対処法
人間関係に悩んだり、ストレスが積もり積もって退職・転職という手段をとることも、もちろん有効な1 つの手段です。
でもせっかく病院薬剤師として働いてやり甲斐を感じているのなら、退職の前に自分でできることをやってみるのがおすすめです。
広くスタッフに悩みを相談してみる
私は、当時3人しか薬剤師がいない状況で、院内薬局での人間関係の不和を3年間経験したことがあります。そのような時は、他職種の看護師や理学療法士の友人に悩みを打ち明けていました。
自分だけでずっと悩んでいると、余計に辛くなってしまうので、周りのスタッフで相 談できそうな人を見つけて相談するだけでもストレス発散につながります。
人間関係はすぐに解決できることではないですが、話を聞いてもらうだけでも随分違いますよね。
相手のいいところを考えてみる
これは私がやってみて良かった方法ですが、相手の良い部分を考えてみることです。
薬剤師同士だと狭い薬局の中での人間関係は避けられない場合が多いので、相手のいいところを見つけ、その良い部分に注目するようにしました。
例えば、この人はDI業務がとても得意だなとか、あの人は引き受けた仕事はきっちりやって いるな等見つけることができました。
いいところが分かると、その相手のいいところを生かすような形で仕事を依頼してみたり、いいところを観察し自分の業務にも活用できることはないかと考えたりしていました。
こうすれば仕事にも少し前向きに取り組む事が出来ますよね。
相手も得意なことを頼られると嫌な気分にはならないようですし、自分も助かるのでwin-win の関係に少しでもなれるよう、実践してみるのはどうでしょうか。
相談窓口に相談してみる
これはパワハラやセクハラなどハラスメントに該当する場合は、病院内の相談窓口を見つけて早いうちに相談をしてみましょう。
たとえ相手が、医師や上司など断りにくい間柄であったとしても、パワハラやセクハラはあってはならないことです。泣き寝入りをする前に必ず相談しましょう。
もし、そこまでのハラスメントに該当していなくても、職員のメンタルヘルスをチェックす るのは職場の必須事項になりつつあります。
最近は、会社でもストレスチェックを取り入れ たり、相談窓口を作ったりして、メンタルヘルスに力を入れているので、指定の部門に相談してみるのがおすすめです。
まとめ
病院薬剤師は、調剤薬局やドラッグストアとは違い、人事異動や転勤等の環境の変化が比較的少ないため、人間関係の悩みが出てきてしまうと、悩みが深くなりがちです。
また、人によってストレス耐性や原因となる出来事には差があります。
そのため、何でも自分で抱え込むのではなく、周りの信頼出来る第三者に相談してみたり、冷静に相手のことを見つめ直す視点を持って人間関係に対応してみたりする、そうした事が大切になってくるのです。
長く病院薬剤師として働いていけるか、あるいは薬局などに仕事を変える必要もある段階なのか。そうした点も踏まえ、仕事に携わっていく事が大事です。
人間関係で精神的にボロボロになる薬剤師も多いのです。早めの対応が肝心ですね。