薬剤師の皆さんの中には、薬局薬剤師として薬剤師のキャリアをスタートした人も多いでしょう。
毎日多くの時間を使って仕事の悩みを抱えながら試行錯誤して患者さんへのサービス向上を目指して頑張っていますよね。
ただ生活の一部と言っても過言ではないこの仕事も、いつかは辞める日が来ます。その時にどれくらいの退職金をもらえるのか気になりますよね。
薬局薬剤師の退職金はどうなっているのでしょうか。薬局に勤めている薬剤師は、ぜひ参考にして下さいね。
まずは、退職金の金額はどうやって決めているのかご紹介していきます。
薬局薬剤師の退職金【結論】
まず結論ですが、働く薬局によって大きく変わります。ざっくりいうと、大企業(従業員が1,000人以上の薬局)かそれ以下で制度自体が異なります。
中小企業(従業員1,000人以下の調剤薬局)なら、10年勤務しても寸志程度(10~30万円程度)のところが多いですし、もう少し気持ちはずんでくれる薬局もあります。
基本的にそうした中小調剤薬局の場合、「中退共」という制度で退職金を支払います(この場合、会社がが掛け金を払う)。
この掛け金は薬局(会社)が決めているので、中堅規模チェーンで働く場合は、しっかり事前に確認しておくこと、それに尽きるのです。
また、大手チェーン薬局・ドラッグストアの場合は、確定拠出年金制度(企業型含む)を導入していると考えて間違いないでしょう。これは、自分の給与から一定額を積み立てるもの。
「自分の給与から積み立てる」というと退職金とは違うように思ってしまうかもしれませんが、その掛け金(拠出金)は課税対象とならず、非常に優れたシステムです。掛け金分は所得にならないので、社会保険料も軽減されます。
ただ転職の多い薬剤師。確定拠出年金の場合は基本的に定年、つまり60歳以降までは引き出せないのがデメリットと言えますね。とは言え薬剤師と言えども老後が心配なもの。
老後に対する資金として考えるのなら、確定拠出年金の制度はある意味引き出せないことこそがメリットと言えるかもしれません。
税制上のメリットが非常に大きいので、やらないと損です。
「調剤薬局の退職金、そんなにひどいなんて悲しすぎる」と思うかもしれませんが、いわゆる大手一般企業だって基本的には確定拠出年金制度(企業型含む)ばかりです。
自衛しなくてはいけない時代という事ですね……
要約すると、今の時代どんな会社だって「退職金なんか期待出来ない」です。薬剤師に限ったことじゃありません。確定拠出年金にしたって結局自分の給与からです。
まず間違いなく、純粋に退職金が手厚い薬局などほとんど存在しないと考えて良いです。そのため、いかに年収を上げるかを考えた方が得策ですね。
さて以下、個人経営の薬局で働くケースなどについても解説していきます。
転職活動、就職活動の際には、しっかり自分で確認するというスタンスが大切です。
個人経営の薬局では勤続年数によって変わるケースが多い
多くの薬局では勤続年数によって退職金の金額は変わります。3年以上勤めると退職金をもらえるケースが多く、基本給×勤続年数といったシンプルな方式をとっている薬局が多いです。
その他には基本給×勤続年数×係数(0.5~0.8)といったケースも多く見受けられます。薬局によって係数が変わっているので、係数が多い薬局の方が多くもらえてお得ですよね。
また、基本給にも注目しましょう。自分の給与総額は把握しているけれど、基本給や細かい手当まで把握していないという薬剤師は多いです。
自分の基本給がいくらか答えられる人はどれくらいいるでしょうか?薬剤師の場合、薬剤師手当が支給されている薬局が大半です。
薬剤師手当は3万円~10万円と薬局によってかなり差があります。A薬局とB薬局で同額の給与だった場合、薬剤師手当が高ければ高いほど基本給が少なく設定されているというわけです。今すぐ自分の基本給を確認しましょう。
薬局側から考えてみれば、これまで頑張ってくれたとしても辞めていく従業員に多くの金額を払いたくはないというのが本音です。
そのため、食事手当、家族手当、住宅手当など手当で給与をかさ増しして退職金に関わる基本給を抑えているところもあります。
薬局に何年勤めると退職金がもらえて、どのくらいの年数働くといくらもらえるのか把握することは重要です。
ほとんどの薬局の場合には、社内規定に退職金について記載されていることが多いので必ず確認しましょう。
自己都合退職か会社都合退職か
薬局を辞める時には、2つの辞め方があります。自己都合退職と会社都合退職に2つです。自己都合退職とは自分の病気、結婚、転居、親の介護など自分の都合で退職することを指します。
もちろん、自分の希望する勤務地や給与、休日数などを目当てに転職する場合も含まれています。そのため、薬局を辞める人のほとんどが自己都合退職になっています。
一方、会社都合退職とは業績悪化による倒産や解雇、賃金の未払いなど会社側に責任があって退職を強いられる時の退職を指します。
どちらが良いのかという問題は失業給付金をもらう時に比較されることが多いです。会社都合退職の方が支給期間や金額、支給開始が早まるなど有利になることが多いからです。
しかし、この問題は失業給付金だけでなく退職金にも大きく関わってきます。ほとんどの薬局では自己都合退職よりも会社都合退職の方が退職金の金額が多くなるように設定されています。およそ2倍の差が出るケースが多いです。
例えば、満5年勤務して自己都合退職であれば50万円もらえるところが、会社都合退職であれば100万円といった感じです。退職の理由だけで2倍も差が出るのは驚きですよね。
できたら、2倍もらいたいところですが、ほとんどの退職は自己都合退職となるため余程会社に落ち度がある場合以外はもらえないと思っておいた方が精神衛生上も良いかも。
期待が高まり過ぎても良くないので、会社都合退職の方が高いということだけ覚えておきましょう。
学歴
薬剤師の場合、学歴はあまり関係ないと考えている人も多いでしょう。偏差値が低い薬学部を卒業しても偏差値が高い薬学部を卒業しても薬剤師免許を保有していれば関係ないことが多いです。
しかし、学部卒なのか大学院卒なのかで給与が変わる薬局はあるため退職金の金額に差が出ます。また、6年制の薬剤師も増えてきており、6年制と4年制で変わることもあります。
4年制学部卒の薬剤師と6年制大学院卒の薬剤師では大きく金額が変わる薬局もあります。もちろん、学歴によって差をつけない薬局もあるため、自分の学歴によって有利な薬局を選ぶのが良いですよね。
薬局薬剤師の退職金を多くもらうには?
退職金は、まとまったお金をドカッともらうことができるため嬉しいですよね。老後の資金、住宅ローンの頭金、投資の種銭など使い方は人それぞれ。せっかく退職金をもらえるのであれば、多くもらいたいですよね。
そこで、退職金を多くもらうための秘訣をご紹介します。まだ新人の人もいつか辞める日は来るので参考にして下さいね。
長く勤める
一番簡単に退職金の金額を引き上げる方法は、会社に長く勤めることです。最近では雇用の流動性が重要視されていますが、一昔前までは終身雇用が当たり前でした。
薬局業界は、20~30年前ほどから厚生労働省が医薬分業を推し進めていったため、団塊世代が自分の薬局を開業させていきました。
それから時が経ち、その頃開業した経営者達は60~70歳にさしかかっているという状況です。また薬局業界は大手のシェア率が少なく、ほとんどが中小規模チェーンなのです。
このような状況から昭和気質の経営者が多く、定年まで勤め上げた場合に多額の退職金を支払うのが当たり前という感じです。
もちろん、なるべく退職金は払いたくないので退職金制度がないという小規模薬局もありますが、大手でも中小規模チェーンでも新卒から定年まで勤め上げた場合には1000~2000万円ほどの退職金が支払われるケースが多いです。
会社の規模により退職金は変わりますが、長く勤めた場合には数千万円単位の退職金が用意されています。多くの退職金をもらいたいという人は、なるべく長く勤められそうな薬局を選んで長く勤めましょう。
会社都合退職にしてもらう
退職する時にはほとんどの場合で自己都合退職になってしまいますが、なんとか会社都合退職にしてもらうことで退職金を多くもらうことができます。
例えば、中小規模チェーンのA薬局で勤務していたがA薬局が閉局する場合の話です。A薬局以外にも店舗はありますが、自宅から通うのが難しく薬局を辞めることにしても自己都合退職として処理する薬局もあります。
薬局の競争が激化しているため、不採算の薬局を閉局させるのは珍しくなくなっています。しかし、このようなパターンでは薬局の都合で通勤が困難になったため薬剤師に責任はないのです。
この他にもリストラや倒産などが有名ですが、セクハラやパワハラ、労働条件の引き下げなどでも会社都合退職になります。
薬局側が国や県から雇用に関する補助金や助成金などをもらっていた場合、会社都合退職者を出してしまうと打ち切られてしまうため、自己都合退職に持ち込みたいという思惑があるのです。
実際には薬局側の責任で退職を強いられた場合にはしっかりと主張しましょう。
また、薬局が雇用に関する補助金や助成金などをもらっていなければ交渉はスムーズに行くことが多いです。
自分の退職理由が自己都合に当てはまるのか、会社都合に当てはまるのか区別がつくようにしておきましょう。その上で退職する時には不利にならないように自分の権利をしっかりと主張してくださいね。
まとめ
退職金は金額次第で、次の人生が変わってしまうほどインパクトのあるお金です。退職金次第で生涯賃金も大きく変わるため、月給やボーナスだけでなくどのくらいもらえるのか確認する必要があります。
なるべく多くの退職金がもらえるように、ぜひ参考にしてみてください。老後の事なんて関係ないと思う薬剤師も若いと多いかもしれませんが、いずれ他人事ではなくなるのですから。