調剤薬局や病院で薬剤師として何年も働いていると、「ローカルルール」に出くわすもの。
薬剤師として職務を発揮していくのは、どの職場でも同じです。
ただ職場によって仕事のやり方や運用方法が違うのは、転職経験がある人や複数店舗で勤務した事があるなら遭遇する事も多いはず。
もちろん、その職場のやり方に染まっていくことも大切ですが、色々な職場に転職することで「今思えば、やっぱりあのやり方は変だった」と気づくことも結構あるものですよね。
今の時代は、きっとそんなことはないとは思いますが、実際に私が経験してきた「調剤薬局の謎のローカルルール」を紹介していこうと思います。
- 外用の薬袋をひとまとめ
- 分包機掃除用の乳糖再利用
- 初回質問表の再利用
外用薬の薬袋をひとまとめにしてしまう!?
外用薬の薬剤は、「1種類の薬剤につき1袋」が原則なのですが、「薬袋もお金がかかっているからもったいない」という理由で1つにまとめて出すように言われていました。
つまり、外用薬が2、3種類あったとしても、1つの袋に入れて、何種類入ってるかを記載するのみで、患者さんにお渡ししていたのです。
用法は薬情に書いてあるからいい、そんな理由でした。
私が初めて働いていた調剤薬局がそのルールだったので、はじめは「そういうものなのかな」と思っていました。しかし、たまたま別の調剤薬局にヘルプに行った時にやり方が違うことに気づいたのです。
薬袋は、1つにまとめてしまうと、その薬ごとの用法・用量が分かりにくくなってしまいます。薬情を渡していたとしても、なくしてしまったらどうなるか想像が付きますよね。
用法・用量を記載されていない薬袋では、薬袋としての本来の機能を発揮されず、患者さんは混乱してしまいますよね。
この外用薬の薬袋ルールは、当時の調剤薬局にいた、お局薬剤師の指示のもとで行われていました。
お局は危険
つまり事務さんに指示を出して、レセコンの設定を毎回変更して、1つの薬袋しか出さないようにしていたわけです。
うっかり事務さんが全ての薬袋を出してしまうと、その事務さんはめちゃくちゃ怒られていました。
しかし管理薬剤師が変わってからは、その独特すぎる薬袋の運営は、無事正しいルールに戻って一安心しました。
薬袋は、「薬を入れるだけの袋」ではなく、患者さんが正しく薬を服用、使用するために用法・用量が書かれていなければなりませんよね。
薬局の都合だけでローカルルールを決め、大切な事を省略するのは問題があります。
これは小規模薬局だけではなく、大手チェーンであっても「独自のローカルルール」で運用しているケースも割と多く散見される事です。
「もったいないから」を理由に、何かを省略している・再利用するケースはかなりある事かもしれません。
しかし「印刷ミスした薬情の裏紙を使う」など、一歩間違えると個人情報の流出にもつながるケースがあります。注意が必要ですね。
分包機清掃用の乳糖を再利用する!?
分包機で散剤を調剤すると、どうしても分包機内に微量の散剤が付着してしまいます。すると他の薬を調剤するときに、混入してしまう可能性があります。
そこで、分包機内を掃除するのに役に立つのが乳糖です。
薬剤師の方は、もう当たり前のように知っているかと思いますが、乳糖は薬効成分を含まない・体に影響を与えない散剤で、これを利用して分包機内を掃除を行います。
乳糖を分包することで、分包機内に付着している薬を取り去り、他の粉薬を分包する際に薬が混入することを防ぐことが出来ますよね。
分包機内を掃除して出てきた乳糖は、他の薬剤を吸着している可能性があるので、通常ならば捨てるのが当たり前です。
そのはずなのですが、私が初めて務めていた調剤薬局では、またまた「もったいないから再利用!」でした。
もったいないおばけに注意
初めて勤めた職場だったので、私もここではそうするんだくらいの気持ちで思っていたのですが、ヘルプに来てくれたベテラン薬剤師さんがその状況を見て驚いていました。
そして私にこっそり「再利用は本当はダメなんだよ。キレイにした意味がなくなる。」と教えてくれたんです。よく考えて見れば、当然ですよね。
他の薬剤が混入しているかもしれない乳糖を再利用すると、せっかく分包機はきれいにしたのに意味がありません。
もったいないに因われすぎて、本質を見失っているパターンですね。この件も、新しい管理薬剤師がきてから、再利用は禁止されました。
初回質問表を再利用!?
これも私が初めて働いた調剤薬局でやっていた事です。初回質問表が再利用されていました。
「え!?」と思われるかもしれませんが、言葉の通りなんです。
初回質問票って基本的に一人の患者につき1枚ですよね。
意味が分からないと思うので、どうやって再利用していたかと言うと、
- 質問票を鉛筆で書いてもらう
- 薬歴に質問票の内容を書き写す
- 問診票の内容を消しゴムで消す
- 再利用
びっくりしますよね。これ本当に経験したことがあるのです。
当時から、個人情報の保護がよく言われるようになってきた時代だったので、私もこの対応にはさすがに新人の頃でも驚きました。
薬局のローカルルールとか、それ以前の問題ですよね。
いくら消しゴムで消したとしても、その質問票にはうっすらと記載した内容がわかってしまいます。それに使い古した問診票を患者さんに渡すのも、なんだか申し訳ない気持ちに。
これも、お局薬剤師の指示のもとやっていたことで、他のスタッフが指摘することもなく、そのやり方がずっと続いていました。
ただ誰も指摘しないので、当時新人だった私も、この運用に問題があることを言えないままでいました。
初めの職場の常識が「正しいこと」と思うと、後々リスクすら生じてしまいます。
しばらくして、この「初回質問票の再利用」はエリアマネージャーがたまたま薬局を訪問してきた時に発覚。すぐに止めるように指示されました。
会社として、経費を削減することは大事なことですが「もったいない」に囚われすぎて、本質を見失ってはいけませんよね。
そのお局薬剤師の「もったいない」精神は、職場でスタッフ達に押し付けて発揮していくのではなく、家で存分に発揮していただきたいものです。
お局は家でやれ
まとめ
私が遭遇したローカルルールは「もったいない精神」が行き過ぎてしまい、本質を見失っているような事が多かったと言えます。
信じられないような内容もあったと思いますが、本当に経験してきたこと。
でもあえて良かったことといえば、この経験は私が新卒の頃に就職した職場だったことです。
そして、周りにいる人たちのおかげで、間違っていることに気づき、正しい知識を身につけて、このようなおかしな状況から早いうちに脱出することができました。
もし、気づかずにそのまま仕事していたらと考えると本当にぞっとしますね。
就職・転職活動の時に、こうしたローカルルールに気づくことはとても難しいです。もしぶち当たってしまったら、とても苦労します。
私のような経験をする人がいなくなるように、調剤業務の基本をしっかりと身につけて、変なローカルルールに振り回されない知識を身につけておくことをおすすめします!
業務手順書は、しっかり遵守しよう