調剤薬局への就職・転職では、会社選びに大きなポイントがあります。それは、大手チェーン薬局か中小規模チェーン薬局、どちらを選ぶかという事ですよね。
調剤薬局の業界は、大手のシェアが少なく全体の7割近くは中小規模チェーン薬局で構成されています。そのため、大手チェーン薬局よりも中小規模チェーン薬局で働いている薬剤師の方が多いのです。
そこで、今回は中小規模チェーン薬局で働くメリット・デメリットについて紹介していきます。
中小規模チェーン薬局で働くメリット
中小規模チェーン薬局では大手と比較して、薬剤師の採用が難しいケースが多いです。そのため、働く薬剤師にとってはかなり有利な条件を提示されることもしばしば。
まずは、中小規模チェーン薬局で働くメリットについて解説していきます。
給与が大手と比べて高い
働く上で一番気になるのがやっぱりお給料(年収)ですよね。どんなに楽しい仕事でも、給料が低い仕事では続けるのが難しいのが現実。
中小規模チェーン薬局では、薬剤師を採用するのが難しいため大手と比較すると給料が高い傾向です。
同じ年齢、経験年数の薬剤師でも中小規模チェーン薬局では大手より年収で100~150万ほど高くなるケースも多いのです。
もちろんパート薬剤師であっても、時給は200~500円程度高くなることも。
まずは高い収入が得たいのであれば、中小規模チェーン薬局で働くのが良いと言えますね。
休日が多いかも
中小規模チェーン薬局は、大手と比較して休日が多くなるケースがあります。大手チェーン薬局では、労働基準法に則り、たくさんの従業員が不公平にならないよう、年間の休日が設定されています。
そのため所属している薬局だけで年間の労働時間が足りない時には、他の店舗にヘルプとして入り働くこともあります。
しかし、中小規模チェーン薬局では従業員の人数も少ないため、そこまで「全部の従業員にあわせる」必要性は低くなります(それが不満を生む種でもありますが)。そのため、休日は近隣の医療機関の休診日に合わせていることも多々あります。
個人クリニックの門前薬局では、週に2.5休でゴールデンウィークと年末年始は10連休といった、大手では考えられないほど休日が多いこともあり得ます。
給料も高く休みが多いので、働く薬剤師にはかなり有利な条件と言えますよね。
転居を伴う異動が少ない
中小規模チェーン薬局では、地域に密着した薬局づくりをしている会社が多く、同一地域に店舗展開しているケースがほとんど。
そのため、大手のような全国転勤ということはまず無いのです。
たとえ他店舗へ異動ということになっても、電車や車で通える範囲に店舗展開していることが多いので転居を伴う異動の心配がなくなりますよね。
異動によって働く環境だけでなく、生活する環境も変わるというのは大きな負担と感じる方も多いはず。
特に小さなお子さんのいる家庭では、大手チェーン薬局で働いていると時として、単身赴任にするのか家族みんなで転居するのかと頭を悩ませる場面も出てきてしまうのです。
そんな悩みを抱え込まなくて済むことは、中小規模チェーン薬局で働く大きなメリットと言えますね。
中小規模チェーン薬局で働くデメリット
ここまで中小規模チェーン薬局のメリットを紹介してきました。薬剤師にとって有利な条件ばかりで、「働きやすいそう」そんな風に感じる人も多いかもしれません。
しかし、メリットばかりではありません。中小規模チェーン薬局で働くデメリットについても紹介するので、参考にしてみてください。
人間関係に悩みやすいことも
中小規模チェーン薬局では従業員の人数が少なく、社長との距離も近いという特徴があります。そのため、人間関係に悩みやすい薬剤師もいるかもしれません。
大手であれば、一緒に働いている同僚とうまくいかなかったとしても、従業員が多いためその同僚以外と仕事をすれば問題ありません。
しかし中小規模チェーン薬局では従業員の人数が少ないため、苦手な同僚ともうまくやっていかなければならないケースに遭遇する可能性もあるかもしれません。
また、社長との距離が近く、仕事やプライベートでも社長と関わる場面が増えてきます。そこで社長に嫌われてしまうと、仕事での立場が弱くなってしまう事も考えられますよね。
特に中小規模チェーン薬局ではワンマン経営であることが多いため、仕事に直接影響が出てしまいます。
そういったことから中小規模チェーン薬局では人間関係に悩まされる傾向があることがデメリットの一つといえるかもしれませんね。
大手チェーン薬局に買収される可能性がある
ここ数年、保険薬局業界では大手が中小規模チェーン薬局を買収するM&Aが盛んです。調剤報酬が厳しくなっていることや、経営者の高齢化から大手に自分の薬局を売ってしまう経営者が増えています。
働いている薬局が吸収合併されてしまうと、労働条件は「大手の就業規則」に合わせる事になるので、給料が下がったり休日が減ったりする事に繋がります。
最近では、新卒で入った大手を辞めて労働条件の良い中小規模チェーン薬局に転職したのに、辞めた大手に買収されてしまったというケースも耳にします。
この場合、労働条件も悪くなってしまうし、元同僚と再び働くことになるので最悪です。中小規模チェーン薬局にはこういったリスクがあることも理解しておかなければなりませんね。
スキルアップが難しいことも
大手では社員教育が充実しています。新卒や未経験で入社しても、働きながら薬剤師として成長していくことが可能です。
しかし、中小規模チェーン薬局では教育体制が整っていないことも多いです。即戦力が求められる傾向にあり、新卒や未経験では働きづらく、スキルアップも難しいといえます。
また、その薬局特有のルールが当たり前になっているケースが意外と多く存在します。
つまり、新卒や未経験でその薬局で働いてしまった場合には、薬剤師としての常識が抜け落ちてしまう可能性もあるかもしれません。
他の薬局では通用しないルールが体に染み込んでしまえば、大手に転職した時にかなり苦労することになるかもしれませんね。
デメリットを補うためには?
中小規模チェーン薬局には大きなメリットもありますが、デメリットもあるためリスクと隣り合わせです。
そんなデメリットを補うためには、どのような働き方をすればよいでしょうか?中小規模チェーン薬局のデメリットを補うための方法を解説していきます。
自己研鑽に励む
中小規模チェーン薬局では教育体制が整っていないため受動的な態度で仕事をしていては薬剤師としてのスキルは上がりません。そのため、自己研鑽が重要になります。
地域で行なっている勉強会に参加したり、薬剤師専門の情報サイトに登録したりと自分から積極的に学んでいく姿勢が必要です。
同僚以外の薬剤師と関われるコミュニティに参加して、仕事時間以外にも勉強をしていきましょう。
いつでも転職できる準備をする
大手に買収されてしまい労働条件が厳しくなってしまった場合には、いくら社長に訴えても覆すのは難しいです。
薬剤師としてこれまでのような労働条件で働きたいのであれば、同じような中小規模チェーン薬局に転職するしかありません。
薬局が買収されたことが従業員に通知されるタイミングは突然やってきます。そのような通知を聞いたら不安になってしまう方がほとんどでしょう。
業績が悪いようなケースは要注意。
しかし、いつでも転職できるように転職先の目星をつけておけば不安も軽減されます。また、いざ転職という決断を下した時にもスムーズに行動することができるのです。
中小規模チェーン薬局で働いている薬剤師は、いつ薬局が買収されても動じないように準備をしておきましょう。あまり不安になる心配はありませんが、「その時」は突然やってきます。
副業や投資で複数の収入源を作る
いつ薬局が大手に買収されてもいいように転職先の目星をつけていたとしても、いざ買収の事実を知ってしまうと動揺してしまうものです。
候補となる転職先の内定を勝ち取れるかはわからないし、転職活動というのは心身共に大きな負担も生じます。
そのため、転職の準備をしておくことも重要ですが、副業や投資で複数の収入源を作っておくことも選択肢としていれておくと良いかもしれません。薬剤師じゃなくてもそういう時代ですよね。
中小規模チェーン薬局で働いている間はお金にも時間にも余裕があることでしょう。このお金と時間を副業や金融商品に投資することで、薬剤師としての薬局からの給料以外の収入を作っておくことは意識したいもの。
吸収合併なんかなくても、収入が複数あることで経済的にも精神的にも余裕が出てきますよね。
そのためいざ薬局が買収されたとしても、労働条件にそこまでシビアになる必要がないため、そのまま大手で働くという選択をすることも躊躇する可能性は減るはず。
薬局からの給料しか収入がない場合には、今の収入を維持するために転職という選択肢しかありませんが、複数の収入源があれば選択肢は増えます。
時間にもお金にも余裕があるという中小規模チェーン薬局のメリットを活かして、いつか来る買収というリスクに備える事が大切かもしれませんね。
まとめ
中小規模チェーン薬局には大手チェーンにはない大きなメリットもありますが、大手にはないデメリットもあります。どちらがよいのかは薬剤師それぞれの考え方次第ですよね。
しかし、中小規模チェーン薬局で働きながらも日々の行動でデメリットを解消することも可能。
中小規模チェーン薬局のメリットとデメリットを考慮した上で、自分が働く薬局を選んでいく事が大切ですね。