「薬剤師は、給料が高く有給休暇もとれて羨ましい」と言われた経験がある薬剤師は多いかもしれません。
でも、薬剤師とはいっても所属している調剤薬局・ドラッグストアや病院によっては有給休暇もとれず、給料も安いというケースもあります。
そんな職場で働いていると身も心も消耗してしまい、仕事が身体を壊すきっかけになってしまうこともあるかもしれませんよね。
そこで、積極的に有給休暇が取得できる環境を整えることの重要性について考えてもらいたいなと思います。
有給休暇が取得しにくいとどうなるのか?
日本の有給休暇取得率は平均50%程度とされています。政府は、70%という目標を設定していますが、達成するのはなかなか難しいです。
平均が50%であれば、100%取得できる職場もあれば「ほとんど0%」というブラックに近いような職場までさまざまです。もちろん今は、年5日間は薬局だって病院だって義務化されています。
有給休暇が取得しにくいとどうなると言えるでしょうか。
有給休暇は労働者の権利
有給休暇は労働者の権利です。「うちの薬局」はそんな制度はないと説明をしている経営者の方もいるかもしれませんが、それはあり得ません薬剤師の無知につけ込んでいるだけ。
労働基準法で規定されているため、会社の規模によって有給休暇がある会社とない会社が存在するということはありません。これは派遣薬剤師でも同じ。
薬局でも病院でも、正社員でもパートでも、労働時間と週の労働日数、それと勤続年数によって取得できる有給休暇が法律で決まっています。
当然のように使える権利が存在しないなどと経営者から虚偽の説明をされれば、有給休暇とはどのような性質のものか知っている薬剤師からしたら納得がいかず不満も募ることでしょう。
そんな状態で仕事をしても良い結果は生まれませんよね。
経営者との間に亀裂が走り、患者さんの満足度・医療貢献も下がってしまう、もちろん売り上げが下がるので労働環境はさらに悪化していくことになってしまうのです。
薬剤師の離職率だって、そうした職場は高い傾向にあります。
有給休暇を取得しないのはお金を捨てているのと同じ
有給休暇を取得すると、仕事を休んでいても賃金が発生します。
退職する時には未消化の有給休暇を消化していく事になりますが、20日程度残っていれば公休と合わせて1か月程度休むことが可能なため、次の仕事への準備をする薬剤師が多いです。
この期間は給料が発生しているため、休みながらお金を受け取ることが出来ますよね。これって、「有給休暇を取得しない事=お金を捨てているのと同じ」そうとすら言えます。
休みが取りにくいと考えている薬剤師は、まあ仕方がないかと諦めてしまうケースも多いです。
しかし、本来もらえるはずのお金、それを貰えないと同じだということを理解すればしっかりと取得しようと考える方が増えるでしょう。また、そうした考えを持たなくてはダメ。
不当にお金を受け取れない状況が続けば、不満も募っていきます。有給休暇=お金と考えて、しっかりと取得していく事が重要ですよね。
薬剤師は転職する人が多いものの、有給休暇の取得が出来る環境じゃないと「そもそも働き続けられない」というケースも多いんです。
薬剤師間で争いが発生する
有給休暇が取得しにくい労働環境では、薬剤師同士の争いが発生します。これは病院よりも調剤薬局の方が顕著に起こります。それは、薬局は店舗によって開局時間や定休日に差があるからです。
薬局では、薬剤師Aが所属している薬局では開局時間も短く、定休日も多くて、薬剤師Bが所属している薬局では開局時間が長く定休日がないというケースが割と多くありますよね。
特に中堅以上、大手チェーン薬局ほど、店舗間格差は結構あるもの。
このケースでは薬剤師Aの方が取得しやすく、薬剤師Bの方が取得しにくいといえます。こうなってしまうと薬剤師Bの怒りや不満は募っていき、その行き場は経営者だけでなく薬剤師Aに向けられてしまうことがあるのです。
薬剤師の人数が多ければ、薬剤師Bを休ませるために応援に向かうこともできますが、薬剤師の人数がギリギリの中小規模チェーン薬局ではそうはいかないケースもきっと多いはず。
穴埋めをするヘルプ要員や、派遣薬剤師で対処する事が出来ないからです。
そして、労働者同士の仲が悪ければ、コミュニケーションの機会も少なくなってしまいますよね。
薬剤師同士のコミュニケーションをきっかけに患者さんとって良いサービスのアイデアが生まれることがあります。ふと手が空いた時のふとした会話で気付かされる事って多いですよね。
そんな機会を失ってしまうため、良い仕事ができる環境とはいえません。薬剤師同士が足を引っ張り合う状況を作ってしまうため、さまざまなことに悪影響が及んでしまいます。
やはり有給休暇は、極力希望どおりに取得出来る職場が理想としか言えないのです。
積極的に有給休暇が取得できるメリット
積極的に有給休暇が取得できると職場には良い循環が生まれ、さまざまなメリットがあります。さて、どんなメリットがあるのか具体的にご紹介します。
ワークライフバランスが良くなる
有給休暇が取得できないと休日は薬局・病院の就業規則で定められた休みのみ(たいていは週2日+祝日)となります。
あまり仕事が忙しければ、その薬剤師の休日は、仕事の疲れを回復する時間に当てざるを得ないので仕事中心の生活となってしまうかもしれませんよね。
しかし有給休暇は、勤続年数に応じて年間10~20日付与(新人薬剤師なら10日:法定通りなら入社半年後に付与)されるので、これを取得できるようになれば年間の休日は大きく増えるのです。
その有給のお休みを利用して、自分の好きなことをする時間に当てれば生活の満足度や質はとっても上がります。もちろん、取得に理由なんて要りません。
公休は体を休めることに使い、有給休暇は好きなことに使うという事ができれば、薬局の仕事ばかり考えたりなどしてしまうような、仕事中心の生活ではなくなります。
仕事もプライベートも充実するため、あなたの薬剤師としての仕事とともに、休日も満足度が上昇。ワークライフバランスは大きく向上しますよね。
ちなみに海外では日本人は真面目すぎると評価されています。ワークライフバランスは気にせず、毎日決まった時間に仕事へと向かうのです。充実したプライベートがなければ、良い仕事はできません。
家族との時間を満足に過ごすことができないため、なんのために働いているのかわからなくなってしまいます。いくら年収が高くたって、休みが少ない薬剤師では働き甲斐すら失われてしまうのです。
薬剤師もワークライフバランスをもっと意識して、仕事ばかりの生活から脱出しましょう。
もちろん、なかには有給を使って学会などに行く人もいるでしょう。それもいい選択ですよね。もちろん、それが「半強制」ではない前提です。
時間を有効に使うことができる
有給休暇を取得できれば、好きなことに時間を使うことができます。趣味の時間として使っても、勉強の時間として使ってもよいですよね。
仕事が大好きという薬剤師は、本業の勉強時間にあてるのもいいかも。例えば、薬剤師の場合であれば認定薬剤師や専門薬剤師、健康サポート薬局の研修を受けるといった感じです。
とは言え、資格・能力・スキルといった部分で他の薬剤師と差をつけることができます。これによって本業のパフォーマンスが向上しますね。
パフォーマンスが向上すれば、人事評価が上がって昇進や昇給のチャンスがやってくるかもしれません。脱、低年収薬剤師。
しかし、仕事は生活のために仕方なくやっているという方も多いことでしょう。そんな薬剤師は、副業や投資の勉強をする事もメリットがあるかも。薬剤師というよりは、社会人としてという事ですね。
有給休暇中は、会社から給料を得ることができ、その時間を利用して副業や投資ができれば生活は潤う可能性も高まります。こうなれば、仕事の時間を減らすことも可能になるのです。
経済的に自立できれば薬剤師としての将来の不安も減ることになって「雇われるだけが全て」じゃないことにきっと気付けます。有給休暇を取得して時間を有効に使えば、現状を変えることも可能なのです。
また、趣味の時間に使うのもよい方法です。昔は、現役時代にしっかりと働いてお金を貯めて老後は趣味に生きるという生活がスタンダードでした。
しかし、体が老いてしまってからでは趣味も限られてしまいます。老後の趣味として定番の旅行も新型コロナウィルスの影響で気軽に出かけることはできません。現役時代から趣味の時間を作って人生を楽しむ必要があるのです。
若いうちにしかできない趣味は結構多いです。「あの時にやっておけばよかった」そんな後悔のないよう、今のうちから有給休暇を活用して趣味・プライベートの時間を楽しむ事が大切ですね。
薬剤師・事務間で同僚と協力して仕事できる
有給休暇が取得しにくいと職場だと、労働者同士の軋轢が生まれる可能性があります。要するに、不満を抱える薬剤師が多くなってしまうという事。
有給休暇が取得しやすい調剤薬局などであれば、いつでも好きな時に取得できると心に余裕が生まれます。これって本当に身体も心も楽。
この心の余裕は、苛立ちの機会を減らして譲り合いの精神で仕事をすることが可能になります。こうなれば、薬剤師間、事務スタッフなどとも協力して仕事が出来るようになりますよね。
お互いを思いやる心があれば、薬局・病院内で仕事上のコミュニケーションでも良い効果に期待ができます。ギスギスした人間関係の中で仕事をするよりも、良い雰囲気の中で仕事をする方が生産性も上がるのです。
気持ちよく仕事をするためには有給休暇の取得は必須といえますよね。
まとめ
有給休暇はいつ取得するか考慮する必要があるものの、取得できる「権利」があります。でも現状では50%程度の取得率に留まっていて、労働者が損を被っている状況と言えますよね。
もし有休取得率を増やせれば、きっと今より働く環境がグッと良くなっていくはず。
有給休暇が取得できない薬局・病院を「管理職が悪い!」と批判するだけでなく、取得しやすい職場環境作りに積極的に参加し、気持ちよく仕事をしていきたいものですね。