病院・薬局実習に、国家試験対策や卒論研究と、忙しい中進めないといけないのが薬学生の就職活動。
調剤薬局・病院・治験 ・MR・研究・進学など、様々な道を選択することができる中から、病院に就職したい場合はどのような点に注意すればいいか分からない人も多いはず。
そこで、目指したい薬剤師像からの病院の選び方をお伝えしていきます。
年収も大事ですが、それだけでは無いですよね。あなた自身に合う病院選びの参考にしてください。
①病院薬剤師として高度医療に携わりたい
医療の最前線を経験したい・高度医療に携わりたいと考える薬学生は、大学病院や大規模病院、救急指定病院、救命救急センターへの就職が向いているかもしれません。
上記のような病院は救急医療を担っていて、急性期の病床があるのが特徴。
急性期の患者さんは経過が早く、容態が数時間前とは大きく変わっていくケースも多いので、的確な情報判断やスピード感が求められてきます。
患者さんの状態が急変する可能性があるため、業務内容は「忙しい」と言える場合ほとんど。救急は24時間対応のため、急な残業が発生することも少なくは無いのです。
夜勤のシフトが発生するので、体力がある若いうちに経験しておくのも考慮にいれたい所。
ただ注意して欲しいのは、大学病院に就職したいと考えた場合、ほとんどが新卒での採用となります。中途での薬剤師採用は欠員を補充する場合のみなので、転職したいと思ってもタイミングは読みづらいです。
求人自体あまり見かけないので、大学病院に中途で入ることは難しい、そう考えた方がいいかもしれませんね。
②病院薬剤師として専門性を身につけたい
病院で薬剤師としての専門性を身につけたい場合は、各団体(日本病院薬剤師会など)が定める「専門薬剤師」を目指してみると良いかもしれませんね。
現在認められている専門薬剤師は以下のものがあります。
- がん専門薬剤師
- 栄養サポートチーム専門薬剤師
- 感染制御専門薬剤師
- 精神科専門薬剤師
- HIV 感染症専門薬剤師
- 妊婦授乳婦専門薬剤師
- 腎臓病薬物療法専門薬剤師
このような専門薬剤師になるためには、多くの要件が必要になってきます。
例えば、薬剤師としての実務経験年数や様々な症例を経験する事、論文の発表、さらに薬剤師会が認定した施設での研修など。
興味がある分野については、その病院が事前に認定された研修施設であるか、また職場内で専門薬剤師制度をとれるサポート体制が整っているか、それは必ず確認しておく事が大切ですね。
もちろん病院薬剤師として通常業務を行いつつ、さらに専門薬剤師のための研修や勉強を行う必要があるので、かなり大変だと感じるはずです。
それでも取得によって薬剤師として「差別化」できますし、昇進や給与面での優遇、また専門性を活かして医療チームの一員として医療に貢献することができるはずです。
③結婚・出産をしても病院で長く働き続けたい
これは主に女性に限った事になってしまうんですが、病院で長く薬剤師として働きたいならとても大事なポイント。
独身の頃は、休日出勤や夜勤、残業があっても働くことができます。しかし子供が生まれると子供のお迎え時間までに仕事を終わらせる必要が出てきて、環境によっては働き続けるのが難しいですよね。
地域によっては日曜日は保育園が空いてないことも多く、土曜日でも早い時間で保育園が終わってしまう事も。そのため、どうしても仕事ができる時間帯に制約が出てきてしまうのです。
しかしそのような制約がある中でも病院薬剤師としてキャリアを継続していくためには、育児休暇制度が充実している病院や回復期、療養期の病院を探してみましょう。
なぜなら回復期や療養期がある病院は、比較的患者さんの容態が安定していることが多いので、急変することは少ないため。急な残業も少なく、夜勤があってもそれほど忙しくないことが多い病院もあります。
産休育休制度があるかを確認する際に注意してもらいたいのは、病院全体としての産休育休の実績があるとしても、それが看護師だけの実績がだったということもあり得ます。
実際に、私が勤めていた病院もそうでしたし、薬局で産休育休を取るのは私が第1号になりました。
また、暗黙の了解で、産休育休は取れずに退職する薬剤師もいます。中には産休育休は取ってもいいけれども半年で復帰するように言われるところもあるようです。
病院としては、産休育休を取るように推奨していても、部署によって取りやすさや取りにくさもあります。
共働きや産休育休後の社会復帰が当たり前の時代になってきたと言っても、病院薬剤師として働いていく中ではこのようなことが現実としてあるのです……。
薬剤師が産休、育休を取った実績があるかどうか、しっかり踏み込んで確認しておく必要がありますね。
④病院薬剤師として患者さんと深く関わりたい
病院で働くことのメリットは、患者さんが「入院してから退院するまでの経過」をより近いところから、リアルタイムで確認することができること。
薬剤師として患者さん一人一人と深く関わりたいなら、病院の中でも病棟業務を行っている病院を選択するのが良いと言えます。病棟業務は中小規模の病院でも行なっている所があるので、チェックしてみるのが大切。
また、リアルタイムで患者さんの状態を見て行くためには、電子カルテの設備が整った病院を選ぶことをおすすめします。
急性期や回復期がある病院であれば、患者さんが入院して手術や治療を行い、状態が安定してくるとリハビリ、そして自宅まで復帰する経緯を見ることができます。
入院した患者さんの治療・取り巻く環境などから、様々な職種が関わっていることも実感出来るはずですね。
⑤病院薬剤師業務の全般を経験したい
病院薬剤師の仕事は、調剤業務だけではありません。DI(医薬品情報管理業務)や治験、注射調剤、病棟業務、救急救命、混注業務、医薬品などの発注といった幅広い仕事があります。
病院薬剤師として「ゼネラリスト」になりたいと考えている人は、中小規模の病院を視野に入れてみるのが良いかもしれません。
なぜなら大規模な病院の場合、薬剤師も人数が多く100人規模となってきます。そのため、業務の全てを経験できるかどうかは他の薬剤師との兼ね合いもあり、自分の希望が通るとは限らないからです。
院内調剤がある大規模な病院は、入職して長いあいだ院内調剤に携わるケースがあります。そのため、病棟業務や他の業務も経験していきたいと思っていても、他の薬剤師が担当をしているので携われない事も。
そんな訳で、このようなジレンマを解消するために、大規模な病院ではなく、あえて中小規模で地域密着型の病院を探してみることがおすすめかもしれませんね。
中小規模の病院だと薬剤師の人数は少なくなってくるので、様々な業務に携わる機会が増えてきます。
「忙しいな」と感じることも増えてくるはずですが、様々な業務を満遍なく経験することは病院薬剤師としてのキャリアアップの近道です。
病院を見学する時は、病棟業務、輸液調製、委員会活動等の内容についても事前によく確認してみる事が大切です。
まとめ
一口に「病院」と言っても、様々な特性を持っている事は、まず就職活動でしっかり抑えておきたいポイント。それが病院薬剤師として働く目的にもつながってくるからです。
自分がどのような病院薬剤師を目指しているのかよく考えてみて、自分に合った病院を見つける事が必要ですね。
【参考記事】
・薬剤師国家試験後から就職活動する3つの注意点【2024年版/国試浪人も】
学生であっても、薬剤師の就活・転職サイトのエージェントなどからもしっかりと情報収集し、就職活動に役立てください。