イトラコナゾール「meek」リルマザホン混入事故から思うこと

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小林化工による、イトラコナゾール錠50「meek」へのリルマザホン混入事故。ニュースの第一報時点では、ここまで大きな事になるなんて思ってなかった。

たぶん、多くの薬剤師が「コンタミで少し混入してしまったのかな」ぐらいの感覚だったと思います。少なくとも自分はそうでした。

今後どういった展開をしていくかは、まず企業として小林化工の対応を見守るしかありません。

ただこの事故、薬局で働く薬剤師としては、自分は「どう捉えていけば良いか」が分からないです。

薬剤師として考えがまとまらない

毎日色々な情報が入ってきますし、自分が「ただの一薬剤師」の考えを記事にしたって意味が無い事です。私見もいいですが、今は客観性を持った報道が大切です。

ただ一方で今は、薬剤師としていろんな感情が混じりながら、この事件を受け止めているという所が本音です。

私達は、ただ亡くなられた方のご冥福をお祈りすれば済むのか。小林化工に、原因究明・今後の対策をして貰えば済むのか。MeijiSeikaファルマの対応の甘さは何なのか。

色々と、絡んでくる事が複雑で、一人の薬局薬剤師としてどう向き合って考えればいいのかが見えません。

なぜなら、視点をどこに置くかで、大きく考えや意見が変わってくるからです。

  • 被害に合われた患者さん視点
  • 一般の患者さん目線
  • 小林化工で働く社員目線
  • 他社の製薬メーカー目線
  • 優しい薬剤師目線
  • 厳しい薬剤師目線
  • 医師目線

ツイッターにいる薬剤師、みんな優しいです。中には小林化工は製薬企業としてはもう無理だという意見もありますが、しっかり対応して将来に向かって欲しいという意見も少なくないように思います。

どなたかがブログで書いていましたが、個人のミスを責めすぎて自殺にまで追い込んでしまうという事はあってはならないことです。

https://kuroyaku.tokyo/itraconazole50meek/

自分もそう思っています。薬局で働いていて過誤を起こしてしまうと、どんなに小さなミスだって、患者さんに迷惑を掛けてしまえば、非常にメンタルがつらい。ミスは0には出来ません。気持ちが分かりすぎるのです。

小林化工で働いていた当該作業員だってニュースを目にするでしょうし、自責の念が強くなることは想像に難くありません(というか想像出来ないほどです)

また、医薬品を製品として出荷するには、管理薬剤師が最終チェックを行います。その薬剤師が、医薬品の製造においては責任の所在者です。GMPを適正に運用する事を担保させる立場にあります。

亡くなられてしまったという事実もあるし、小林化工で働く800名近い従業員とその家族もあります。その従業員みなさんのケアをするのが、小林化工に課せられた使命でもあります。いや、経営者だってつらいです。やはり最後の責任は、取締役に掛かってきます。

推測ですが、800人近い従業員も、正社員よりおそらくは主婦でパートという人が多いでしょう。製薬工場では、ラインにそうした人が多く働いているのです。他に仕事が無くなったら生活もきついはずです。

ただ……そうした事を考えてしまうと、薬剤師目線からは厳しい意見や対応が取りづらいなと思ってしまうのです。

自分自身、過去に少し「出向」という形ですが、製薬で働いていた事があります。色々話を聞きました。昔話を聞くと、回収になった医薬品があるだけでも、非常に大変な思いをされていました。それだけに、今回の事故は、色々な思いが錯綜するのです。

患者さん目線で考えると厳しい対応に

なんて色々考えてしまうんですが、やはり患者さん目線で考えないといけないでしょう、薬剤師ならばなおさらだと思うのです。

自分が薬剤師じゃない、ただの患者としてだったら、もう今後、小林化工のジェネリックはたぶん使いたくありません。家族にも。

いや、それどころか、ジェネリックそのもに対する考え方も変えるかもしれません。先発医薬品の方がいいんじゃないかなと。

十数年掛けて、薬剤師が患者さんに「ジェネリックは同じ成分で、効果も同じですよ。医療費の削減にもなります」と取り組んで来たことが、あっけなく引っくり返されました。

いやいや、先発品でも同じことが起こるかもしれない。

 

先発品の謎のOD錠発売、あれと同じ事では?

確かに、そうです。先発品でも同じ事が起きるかもしれないし、突然発売される謎のOD錠だっていわばGEと大して変わらない承認工程です。

でも、今回の事故は、ジェネリックーメーカーが起こしてしまったという所が最大の問題なんです。「もうジェネリックは信用ならない」そうした意見が一般感覚なんじゃないかなと、個人的には思っています。

だからこそ、MeijiSeikaファルマ、先発メーカーとしてしっかり対応してくれと言いたいのです。これまで良い先発医薬品、たくさん出してきたはず。

イトラコナゾール「meek」
発売:MeijiSeikaファルマ

製造販売元:小林化工

イトラコナゾールに関しては、「製造販売元」である会社に責任があります。立場上、Meijiは売ってあげただけ。

でも、MeijiSeikaファルマの名前で売っていたのだから、先発メーカーの名前を出して売っていたのだから、小林化工に全ての責任を押し付けずに、製薬業界を取り巻く環境のために頑張って欲しい。

先発がジリ貧でジェネリック医薬品に注力してるんだったら、その信頼回復に努める取り組みを今から行って欲しい。そうしないと自分の会社の首を絞めることにもなるはずなんです。

ま、でも私は知ってるんです。Meijiの中ってかなり統制がとれてない事を。だから期待なんて出来ない。自分の想像異常に、対応が適当過ぎた……。

東京都薬剤師会も、相当にお怒りの様子。12月14日の連絡です。

現在のところ、MeijiSeikaファルマは販売責任を無視し、すべての対応を小林化工に任せるとの情報ですので、本件に関するお問い合わせは、小林化工までお願いいたします。

薬局で働く薬剤師としては、問題のあったのはあの製品のみであること、後発品は安全であること、それを引き続き説明していくしかありません。

考え方に矛盾が出てしまうような考え方しか、出来ませんね。しんどい。しんどい。

時系列

2020年12月4日:医薬品自主回収クラスⅠのお知らせ(厚労省)

2020年12月5日:被害の状況が見え始める(福井新聞)
※12名の健康被害が確認(うち重篤5名)

2020年12月10日:健康被害を訴える方が113名に

2020年12月11日:対象ロット服用中の全患者様(354名)の特定及び服用中止連絡が完了(小林化工)

2020年12月12日:イトラコナゾール50「meek」服薬後に死亡(小林化工)

最新の状況は、小林化工のHPにて公表中:健康被害の状況(小林化工)
→年明け以降、更新されとらんやないか!