病院薬剤師が主役のドラマ「アンサングシンデレラ」が2020年に放送された事もあり、薬剤師の仕事が一躍脚光を浴びるようになりました。
ただ、ドラマと現実では病院薬剤師の本当のトコロって分からないですよね。
以前病院で働いた経験もあって、周りの人からは「薬剤師って思っていたより業務がたくさんあって忙しそう。」「病院薬剤師って忙しいんですか?」と聞かれることも増えてきました。
今でも実際に、知人が勤めている病院では、毎日夜の10時まで仕事をしていると聞いたり、17時半の定時で退社し、後の仕事は夜勤に任せているなど様々です。
そこで病院薬剤師の転職経験が2回ある私が、病院薬剤師の業務内容や忙しさ、そして、就職・転職をするときに忙しい病院を事前に見極めるポイントもお伝えしていきます。
病院薬剤師の忙しさは業務内容次第
病院薬剤師の業務内容は、入院患者や外来患者の調剤や持参薬の鑑別、病棟業務、抗がん剤の調製、輸液の調製、委員会活動(感染対策、化学療法、糖尿病、NST、褥瘡、緩和ケア等)、DI 業務など多岐にわたります。
薬剤師だからといっても、働いた事が無ければ病院の仕事内容って深くは知らないもの。
調剤業務は、調剤薬局やドラッグストアで勤務している薬剤師はもちろん経験していると思いますが、それ以外の業務は病院薬剤師ならではです。
そういうこともあり、病院薬剤師って「忙しい」というイメージを持つ人が多いのかもしれませんね。
病院のタイプ
結論から言うと、病院の忙しさは職場ごとで変わります。なぜかと言うと、一言で「病院」と言っても、実際には色々な「タイプ」があるからです。
病院は大きく分類すると以下の四つに分かれます。
- 高度急性期
- 急性期
- 回復期
- 慢性期
また、病棟に関しては次の五つに大きく分けられます。
- 一般病棟
- 療養病棟
- 地域包括ケア病棟
- 回復期リハビリテーション病棟
- 緩和ケア病棟
病棟を複数持っている病院では、一般病棟と地域包括ケア病棟のように組み合わせて運営している病院も少なくありません。
急性期を持っている病院は、救急を受けているので、時間外の急な入院にも対応する必要が出てきます。
病院薬剤師と日勤・夜勤業務
時間外の仕事の対応は、夜勤がいる場合は夜勤で対応することができます。しかし夜勤がない職場の場合は、必要に応じて日勤帯のメンバーで残業をして対応することが考えられます。
そのため時間や状況が読めず、通常業務と重なってしまい、忙しくなり、残業につながりってしまう事も。
急性期に比べて、慢性期になってくると、基本的には急な入院になることはあまりなく、他の病院からの紹介により入院対応になるケースがほとんど。
日勤の時間帯で対応できるように入院のスケジュールが組まれていると考えて良いでしょう。病院によっては、「入院の受付は 16時まで」とはっきり方針を決めているところもありますね。
また、入院する前に、事前にその患者の経緯や現在の状況を把握することができる「診療情報提供書」が送られてくるので、患者の状況を把握することが可能。
また細かい業務の部分では、普段在庫していない医薬品でも、事前に準備することが可能で業務が煩雑になることが防ぐことができるのです。
病院薬剤師の忙しさを見極めるポイント
薬剤師が病院で働くにあたり、その忙しさを把握するためには病院の「タイプ」をしっかりと把握しておく事が大切です。
最初にお伝えしたように、急性期や慢性期、一般病棟、療養病棟のように病院にも様々なタイプが存在することは一番気に留めたいところ。
そのため、自分が就職したいと思っている病院はどのようなタイプなのか、しっかり確認する事がとても大切なポイントになってきますね。
院内調剤と院外調剤
病院でも、院内調剤と院外調剤によって業務内容や仕事の量は大きく変わってきます。
まず、院外調剤の場合は、外来診察時は調剤薬局で薬をもらうので、院内での業務にはあまり差し障りがありません。
ただ、これが院内調剤になってくると話が変わってきます。
薬剤師の人数が確保されている病院であれば、入院対応と外来対応で分けて業務を行うことが可能です。
ただ、小規模の病院の場合だと入院患者の調剤や病棟業務、服薬指導の時間を考慮しながらも、外来患者の処方箋調剤にも関わらなくてはいけません。
このような場合、外来診療時間が業務時間ギリギリまで行なっていると、その後に調剤、監査、服薬指導が必要となってくるので、残業が発生することは珍しくありません。
夜勤の勤務体系は注意
もう1つ、夜勤があることは必ず確認する事が大切。夜勤は1人もしくは2人など、病院の規模にもよりますが、どうしても少人数になってしまう傾向が大きいです。
夜間の急変や急な入院は、1人で対応するケースも増えてくるかもしれません。ただこの点は、経験も増えれば慣れてきて、自分のペースで仕事ができるので良いと感じる薬剤師もいます。
しかし、自分1人で全て対応するのは不安、他の仕事と並行して行わなければならない時に助けを求められない場合も十分にあります。
ただし、夜勤を配置することにより、日勤帯のメンバーは夜勤に仕事を引き継ぐことができるので、日勤で働く薬剤師は帰りやすいというメリットもあります。
また、夜勤を行うことによって、日勤帯だけで仕事をするよりも休みの日数が増えますが、それをどう捉えるかは人それぞれかもしれませんね。
病院の診療時間
またその病院の薬剤師が忙しいかどうか、外来の診療時間を確認してみる事はとても大事です。常勤の医師は、入院患者と外来患者両方を担当していることが多く、外来診察時は入院患者を見ることができませんよね。
そのため、外来の診察が終わってから病棟でまとめて指示を出すことが多いのです。
外来診察時間が業務時間ギリギリまで、ある場合は業務時間外に医師が処方出すことになってしまうので、残業になってしまうことも少なくはありません。
ただ、病院によっては外来診察は午前中しか行なっていないという病院もあります。
その場合は、医師は午後からは病棟に上がって指示を出すことができるので、業務時間内にはほとん ど処方が出るので、残業には繋がりにくいようですね。
薬剤師スタッフの人数
最後に、薬剤師の人数も必ず確認したい部分です。
例えば、病床数・病棟に対して薬剤師の人数が少ない場合は、病棟業務を行っていない可能性があります。
病棟業務は、持参薬を鑑別し医師に情報提供を行ったり、代替薬の提案、入院患者からの情報収集。また、ハイリスク薬の事前説明、医師や看護師からの薬学的相談応需、回診やカンファレンスの参加等、様々な業務があります。
つまり、病棟に薬剤師が配置されることになるので、薬局に薬剤師が少ない状態になります。
病棟業務は薬剤師の職能を十分に発揮できて、やりがいのある業務ですが、薬局にいる人数が減ってしまうことは頭に入れておいた方がいいかもしれませんね。
ちなみに、病院薬剤師を補助するために「事務」が配置されている場合もあります。事務が行う業務内容は、現場の薬局長の判断に大きく左右されるのが現状。
事務が薬のピッキングや発注業務、電話の応対、処方箋の集計等の対応を行なっている場合があるので、そうした職場であれば薬剤師はより仕事に集中することが可能となってきますね。
忙しくてもやり甲斐があるのが病院薬剤師
病院薬剤師の業務は、薬剤師としての専門性を活かした業務が数多くあるので、とてもやりがいのある職業だと感じる薬剤師が多いでしょう。
ただ業務が多い分、忙しいと感じる部分もあるので、病院薬剤師は「やっぱりやめておこう……」と思う就活中の薬学生もいるかもしれませんね。
病院によって、忙しいところと、そうでないところがあります。病院への就職に興味がある学生は、自分が「このぐらいの忙しさならできそう」と思える病院を見つけるのが大切かもしれません。